魚の摂取頻度が多いことは
産後抑うつ状態のなりにくさと関連がある
(エコチル調査より)
妊娠中や出産後は、「気分が落ち込んで何もしたくない」いわゆる「抑うつ状態」になった経験を持つ方も多くおられると思います。
これまで、魚に多く含まれるDHAやEPAを摂取すると、うつになりにくいということが言われてきました。富山大学では、エコチル調査の追加調査から血中のEPA濃度が高い人ほど抑うつ状態になりにくい可能性があることを報告しました(妊娠前期における抑うつ症状と血中ω3系多価不飽和脂肪酸の研究)。
また、妊娠中の魚の摂取が妊娠期および産後1か月での抑うつリスクの低減と関連することを報告してきました(魚を食べると「抑うつ状態」になりにくい~妊娠中のお母さんとお父さんから見えた結果~)。
そこで今回は、さらに時間経過した時点の「産後6か月」および「産後1年」における抑うつ状態との関連を調査しました。
その結果、妊娠期に魚をあまり摂取していない群よりも、それよりも多く摂取している群で「抑うつ状態」のなりやすさが低減していました。また、魚から摂取するDHA・EPA類等のω3系多価不飽和脂肪酸でも同様の傾向があることを、妊娠期および産後1か月に引き続き明らかにしました。
- 産後6か月
一番摂取が少ない毎日5.2g(中間値)に比べて、それ以上魚を食べる群では、「抑うつ状態」のなりにくさと関連していました。 - 産後1年
一番摂取が少ない毎日5.3g(中間値)に比べて、それ以上魚を食べる群では、「抑うつ状態」のなりにくさと関連していました。
今回の検討では臨床的に魚食の影響を調べたものではありません。というのは、魚を食べている方は一般的に健康意識が高く、魚食習慣は単にそのバロメーターになっていて、ほかの健康習慣の影響があらわれている可能性があるのです。したがって、魚あるいはω3系多価不飽和脂肪酸を摂っているからといって本当に抑うつ状態になりにくい、と結論づけることはできないということをご留意ください。これらをはっきりさせるためには、今後臨床的な方法をとるなど様々な角度の研究が必要になってきます。
この研究成果は英国の精神医学専門誌「Psychological Medicine」に2019年9月19日にオンライン掲載されました。
エコチル調査富山ユニットセンター
2019年9月