ご遺族の皆様へ

法医解剖において採取した検体(血液,病理組織標本)と情報の取り扱いについて

法医解剖(司法解剖,行政解剖,調査解剖)では,死因を中心に司法当局から嘱託された鑑定目的を解明するために,血液,内臓器の一部を検体として採取しています。これらの検体は,後日,必要に応じて血液検査,病理組織学的検査(顕微鏡による観察)を実施し,最終的な死因診断を行います。採取した検体の一部,作成した病理組織標本は,死体解剖保存法に従って富山大学が責任を持って保存を行いますが,臓器の一部は検査終了後に火葬させていただく場合があります。

また,保存する血液や病理組織標本は,司法当局から嘱託された鑑定目的の他に,医学部学生への教育や医学研究のために使わせていただくことがあります。

解剖により判明する情報には医学の進歩,公衆衛生の向上,事故・事件の再発防止に貢献し得る貴重な医学的知見が含まれています。そのため,学会,医療界,社会に還元する意義が特に大きいと判断した事例は,学会や学術専門雑誌に症例報告として,症例の概要,解剖所見,検査結果等を発表することがあります。症例報告を行う際には,死者及び御遺族や関係者のプライバシーの保護,人権の擁護に最大限配慮いたします。特に,個人が特定されるような情報は発表いたしません。少しでも個人の特定につながる可能性がある情報の発信を行う場合には御遺族の承諾を得た後に行います。また,この発表によって警察の捜査や裁判に影響がおよぶことはありません。さらに多くの事例を検索することによって得られた医学研究から得られた知見も同様に亡くなられた方の人権を擁護するだけでなく,事件や事故または病気の再発防止に役立てられ,社会の安全・福祉の向上に寄与します。この際にも故人が特定されるような情報の発信はいたしません。以上の趣旨をご理解いただき,当講座での医学研究や教育・事故の再発防止などの社会還元へのご協力をお願いいたします。

上記のような医学研究は,必要に応じて富山大学の倫理委員会において,研究にあたっての倫理的配慮が審議され,承認を得た後に行っており,具体的には原因不明の突然死や事故や自殺などの死亡の原因となり得る神経難病の正確な診断を可能にしたり,突然死や事故,自殺を予防するための研究を行っております。また、神経疾患,精神疾患の形態学的所見の確立や疾患に関与するタンパクの探索を行うとともに,基礎研究資料センターとしての富山大学法医ブレインリソースセンター(THBRC)を設立しております。研究への協力を希望されない御遺族は,協力を拒否することができます。詳細は「趣意書」をご参照ください。研究発表されたことを後から知った場合でも,発表内容の訂正,消去を求めることは可能です。ただしそれらを完全に遂行することが困難な場合があることをご了承下さい。

この文書について,何かご不明な点がございましたらお問い合わせください。

問い合わせ先
〒930-0194 富山市杉谷2630
富山大学大学院医学薬学研究部・法医学講座
担当:西田 尚樹
Tel: 090-434-7281, Fax: 090-434-5024
e-mail: houigaku@med.u-toyama.ac.jp