環境

08:医局の方針ここ富山大から、
富山の医療を底上げする。

座談会メンバー

  • 中島彰俊

    PROFILE

医局の“番頭”として。

ー医局長の仕事を教えてください

中島(以下省略):まず1つは、医局全体が斎藤先生の舵をとる方向へ滞りなく進むようにコーディネートすることだと思います。斎藤先生の意向を先生たちに伝えることはもちろんですが、医局の先生たちの意見を上にあげることも大切です。上と下をとりなすというか。まあ、昔でいう番頭みたいなもんですよ。会社で言ったら中間管理職かな(笑)。

ー医局長として、今の医局に思うことはありますか?

うちの医局は、一般的に他の病院よりも女性医師がすごく多いんですよね。それは、女性が働きやすい環境が出来上がってきていると言うことでもあるので、良いことだと思っています。例えば、お産をした女性医師も復帰してくれる。これは明らかに富山大学産婦人科の強みですね。 だから『女性の社会進出』という課題は、もうちょっと古いかもしれない。私たちはその次のことを考える時期にきていると思います。こんなこと言ったら女性医師になんと言われるかわかりませんが(笑)。

ーこの次の課題とはなんでしょうか?

単純に言えば、男性医師と女性医師のワークバランスのことですね。昔は、”いかにして女性医師を支えていくか”ってことが大きな課題でした。しかしそれがうまくいって女性医師の割合が上がってきた今、逆に若手の男性医師の負担が大きくなりすぎていないか気になってきているんです。彼らの頑張りがあって、女性医師たちも働きやすい環境になっているわけですし。 あんまり不平等は良くないので、そこはこれから改善していくべき課題だと思っています。

見据えるのは、富山全体の底上げ。

ーその他に、どんな役割がありますか?

医局の外との調整係もやっています。その中でも忙しいのは、富山県内の学会のマネジメントですね。例えば富山県産婦人科学会だったら年に5回くらいは開いています。そこでゲストの先生の専門領域について「研究」と「臨床」の両方を絡めてお話していただくんです。対象が富山県の産婦人科の先生なので、一般の開業の先生たちや、普通の病院で働いてる先生たちにも参加してもらいます。

ー年5回は結構なペースですね。

医療は進むのがすごく早いんですよ。だからうっかりしてると自分の領域以外のトピックスはすぐにわからなくなってしまう。自分の領域でさえ、1年間いなかったりすると、その間に内容がガラっと変わっちゃってるような事もあるんです。だから富山県内の先生たちに医療の最先端を定期的にアナウンスしていく事が重要なんですね。学校に行かないと最新のトピックスを勉強できない、というのは良くないですし。そういった意味で、学会は最新の医療を知る機会になっていると思います。

ー富山県全体を見据えているのですね。

いまは医療の均等化の時代です。「この症例は、こっちではできるけど、あっちではできない」というような状況がなくなっていくのが理想です。何か一つを伸ばすのではなく、何一つ、他に劣らないようにする。いわゆる全体の底上げですね。富山県の医療全体の底上げとして「今の産婦人科の医療はこんな感じなんだよ」とお知らせをするような会にしています。

ー富山の学会の特色はなんですか?

周産期死亡率という産科医療のレベルは上がっていっています。つまり死亡率が減っていますね。学会を通じて斎藤先生がレベルを上げて下さったんだなと思います。数字にも出ていますし、県内の先生たちもそういうところは同意されると思いますよ。

“よい流れ”を、生む秘訣。

ー医局長として取り組みたいことはなんですか?

医局員を増やしたいですね。新しい人が入れば、全体の雰囲気も盛り上がりますからね。自分たちの仕事もワンランク上がりますし。逆に入局がない時期が続くと、ずっと下働きをしなくちゃいけなくなってしまう。それに、さっき言ったように女性医師と男性医師のバランスが崩れていると、やっぱり医局として成り立たなくなってしまう。なので、みんなが入りやすい、やりがいのある仕事ができる医局にしていきたいと思います。若者が入って、頑張りやすい環境をつくってあげたいですね。

ー何か具体的にしていることはありますか?

結局学生さんたちへの影響力が1番強いのは、年の近い若手の先生たちなんですよ。なので、私自身は、若手の先生たちがリクルート活動を頑張れるよう後方支援に徹するようにしています。今だったら、実際に若手の先生が学生さんと飲み会をセッティングしているので、その資金を医局の方からサポートしたり(笑)。

ー入局者は、増えていますか?

最近はコンスタントに新しい人も入ってきていますし、好ましい雰囲気だと思いますよ。とはいえ、段階的に増えていくのが大事ですよね。1つの学年だけ人数が多くなったりするのはバランスが悪い。上の人が中間の人を教えてあげて、中間の人が下の人を教えてあげる。その”よい流れ”が生まれることで、それが医局の発展に繋がってゆくのだと思います。

ー”よい流れ”と言いますと?

”よい流れ”に関しては、他の病院との連携の部分でも意識しています。 例えば外の病院で働いていたとして、そこで扱えない赤ちゃんが産まれた場合は、別の大きな病院に搬送しなきゃならない。そんな時にどのタイミングで搬送するのが良いか、的確な判断ができないといけません。医局内に留まろうとせず、大学病院から規模の小さな病院までをローテーションしながら知識や経験を増やし、判断力を鍛えてゆかなくてはならないんです。これも”よい流れ”ですよね。

ー医局の内と外、2つの流れが若手を育てるわけですね。

産婦人科の医療は1人ではできません。上下の連携や、地域の繋がりの流れをしっかり学んで貰って、どんな状況でも自分の医療ができるように育てていくのが、医局の仕事だと思いますね。