呼吸器・アレルギー 研究紹介

呼吸器疾患は多岐にわたっているため、それぞれの疾患ごとに研究グループを形成し、お互いに情報交換をしながら、よりよい診療を目指して日夜努力しております。

研究分野

  1. 肺癌
  2. 感染症
  3. 間質性肺炎
  4. 気管支鏡
  5. 気管支喘息
  6. COPD(慢性閉塞性肺疾患)

研究詳細

  1. 肺癌
    私たちは個々の症例においてエビデンスに基づいた最善の治療選択肢を提示することを目標とすると同時に、肺癌診療の進歩を目指し日々研究活動に取り組んでいます。

    臨床研究
    当科では多施設共同研究や観察研究など様々な研究に取り組んでいます。観察研究では予後予測の重要性を考え、悪性腫瘍症例の予後予測ツールであるPalliative Prognostic Index(Morita T, et al. Supportive Care Cancer 1999)の肺癌症例における有用性(図1)(Inomata M, et al. Med Oncol 2014)やEGFR遺伝子変異陽性症例における予後不良群に関する検討(Inomata M, et al. Mol Clin Onlol 2015)を行い報告しました。
    また肺癌症例の諸症状管理において潜在的な副腎不全に対する理解が重要と考え、Performance statusと血中コルチゾールとの相関を明らかにしました(図2)(Suzuki K, et al. Supportive Care Cancer 2015)。

図1
呼吸器・アレルギー研究紹介(図1)

図2
呼吸器・アレルギー研究紹介(図2)

基礎研究
基礎研究では、熱刺激によるヒト癌細胞のアポトーシスへのDNA-dependent protein kinaseの関与(Okazawa S, et al. PLoS One 2013)、乳癌細胞を用いた転移性肺腫瘍モデルマウスにおけるSIRT1と悪性腫瘍細胞の転移との関連(Suzuki K, et al. Oncol Rep 2012)を報告し、これらの結果は数多くの研究に引用されています。

  1. 感染症
    呼吸器感染症の分野では、耐性菌の増加、免疫抑制剤や生物学的製剤使用などによる日和見感染、グローバル化に伴う輸入感染症などが問題となっています。
    近代日本において呼吸器感染症といえば結核でした。日本はいまだ結核の中蔓延国ではあるものの、標準治療の確立や法整備などにより患者数は減少傾向にあります。一方で近年、肺非結核性抗酸菌症の増加が明らかとなってきており、最新の報告では結核を上回る罹患率が推定されています。当グループでは、肺非結核性抗酸菌症治療の現状と問題点について検討し報告を行いました(徳井, 第90回結核病学会総会, 2015)。
    また、胸部異常陰影を呈した症例の感染症マーカーとして好中球表面マーカーCD64の可能性について検討し報告を行っております(Okazawa S, et al. ATS, 2012)。

  2. 間質性肺炎
    間質性肺炎は原因が多岐にわたる疾患であり、難病の一つです。特に特発性肺線維症は原因不明の進行性疾患として特定疾患に定められており、抗線維化薬のピルフェニドンが使用できるようになり治療選択肢がひろがりつつある分野です。
    当グループでは、特発性間質性肺炎を中心として、ユーロラインを用いた抗ARS抗体や筋炎/強皮症関連抗体の測定を行っております。現在、富山県における特発性間質性肺炎について解析中です。
    基礎研究では、ブレオマイシン肺障害モデルマウスを用い、CD206を発現している肺胞のM2マクロファージが、炎症の発現に重要な役割を果たしていることを報告しました(Kambara K, et al. Am J Pathol, 2015)。現在、肺線維症モデルマウスにおいて、SRT1720がHSP47発現に与える効果(山田:科研費25461183)について実験中です。
    研究医養成プログラムの集大成として、2015年の呼吸器学会総会において当科で指導をうけた医学部研究生が、間質性肺炎のHRCTパターンについて解析を行い発表いたしました(平澤、呼吸器学会総会2015)。

  3. COPD(慢性閉塞性肺疾患)
    COPDとはChronic Obstructive Pulmonary Disease(慢性閉塞性肺疾患)の頭文字をとった略語がそのまま病名となっています。
    このため、一般の方にはなじみのない病名で歴史的には「肺気腫」、「慢性気管支炎」とされた病態が含まれることになります。その定義は「タバコ煙を主体とする有害物質を長期に吸入暴露することで生じた肺の炎症性疾患」とされています(日本呼吸器学会COPDガイドライン第4版、2013)。
    日本人の喫煙率を反映して罹患率が大変高く、2004年の本邦の報告では約520万人の患者が推定されています(Fukuchi Y, et al. Respirology 2004)。

    以前は喫煙により不可逆性の気流障害が生じ、治療が難しいとされていましたが、優れた気管支拡張薬の開発により症状の改善、予後の延長が期待できるようになりました。
    当グループでも病態解明に取り組んでいます。研究医養成プログラムの学生によるCOPDとACOSの比較を発表しました(徳永、呼吸器学会総会2015)(図3)。
    また、近年注目されている身体活動性がCOPDや他の慢性呼吸器疾患にどのように影響しているのか、関与物質を研究する前向き臨床研究も行っています(高、臨27-8)。
図3
呼吸器・アレルギー研究紹介(図3)

  1. 気管支鏡
    気管支鏡検査は、肺癌やびまん性肺疾患の診断を目的とした検査方法であり、呼吸器診療において必須の診断手技です。近年新規機器の普及により目覚ましい進歩を遂げた分野であります。
    当院でも、EBUS-GS法やBf-NAVIを用いた末梢生検法や、EBUS-TBNAを用いたリンパ節生検を、富山県内では初めて導入しました。これら新規機器の導入により、国際学会において、診断率の向上や、明日の実臨床に役立つ研究結果の報告を行い日々の臨床に還元しております(Kambara K, et al. ATS 2012. WCBIP 2014)。

  2. 気管支喘息
    気管支喘息は「気道の慢性炎症を本態とし、臨床的症状として変動性を持った気道狭窄(喘鳴、呼吸困難)や咳で特徴付けられる疾患」です(JGL2015)。
    成人(20歳~44歳)における有病率が 5.3%と高く(Fukutomi Y, et al. Int Arch Allergy Immunol 2010)、適切な治療で喘息死を防ぎ得る(1990年代前半まで:死亡数年間約5000〜6000人。2012年人口動態統計:死亡数1728人)といった点で重要な疾患です。
    気管支喘息の診断には気流制限・喘鳴をきたす他の疾患(心不全や慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アレルギー性肉芽腫性血管炎など)を除外し、咳喘息のような非典型的な喘息や運動誘発性喘息、アスピリン喘息等を適切に診断し、アトピー素因の有無・環境曝露(ハウスダストなど)・増悪因子の有無(副鼻腔炎など)・COPD合併(asthma COPD overlap syndrome)などを適宜確認する必要があります。

    実際に当科では2008年に「富山市婦中町神保地区健康調査」を行い、日本の地域社会において、気管支喘息と虚血性心疾患が高齢者喘鳴の主要な原因であり、高齢者のQOLに影響する可能性を示しております(Inomata M, et al. Intern Med 2011)。大学病院の特性を生かし、気管支喘息の適切な診断・治療に努めています。

主な呼吸器グループの研究業績(2017)

原 著

  1. Ikezaki T, Suzuki K, Kambara K, Inomata M, Okazawa S, Kajiura S, Miwa T, Tanabe K, Kashii T. Relationship between Carnitine Pharmacokinetics and Fatigue in Patients Treated with Cisplatin-Containing Chemotherapy. Oncol Res Treat. 2017 Feb; 40(1-2): 42-5.
  2. Mato N, Hirahara K, Ichikawa T, Kumagai J, Nakayama M, Yamasawa H, Bando M, Hagiwara K, Sugiyama Y, Nakayama T. Memory-type ST2+CD4+ T cells participate in the steroid-resistant pathology of eosinophilic pneumonia. Sci Rep. 2017 Jul 28; 7(1): 6805.
  3. Inomata M, Tanaka H, Tokui K, Taka C, Okazawa S, Kambara K, Imanishi S, Yamada T, Miwa T, Hayashi R, Tobe K. Clinical course after initiation of nivolumab therapy in patients with EGFR-mutated Non-small cell lung cancer with or without Pd-L1 expression. Oncol Ther. 2017 Oct 20; 5(2): 181-5.
  4. Taka C, Hayashi R, Shimokawa K, Tokui K, Okazawa S, Kambara K, Inomata M, Yamada T, Matsui S, Tobe K. SIRT1 and FOXO1 mRNA expression in PBMC correlates to physical activity in COPD patients. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2017 Nov 3; 12: 3237-44.
  5. 猪又峰彦,田中宏明,下川一生,徳井宏太郎,岡澤成祐,高 千紘,神原健太,今西信悟,山田 徹,三輪敏郎,林 龍二,松井祥子,菓子井達彦,本間崇浩,野村邦紀,土岐善紀,戸邉一之.後ろ向き観察研究による非小細胞肺癌術後再発例における局所または全身治療実施後の臨床経過の評価.癌と化学療法.2017 Sep;44(9):767-70.

症例報告

  1. Tanaka H, Inomata M, Hayashi R, Shimokawa K, Tokui K, Okazawa S, Kambara K, Yamada T, Miwa T, Kashii T, Konishi H, Tobe K. A Case of Lung Adenocarcinoma Presenting with Leptomeningeal Carcinomatosis Successfully Treated with Afatinib after Erlotinib-Induced Hepatotoxicity. Gan To Kagaku Ryoho. 2017 Jul; 44(7): 595-7. Japanese.

総説

  1. 平原 潔,篠田健太,遠藤裕介,市川智巳,中山俊憲.慢性気道炎症病態形成における記憶型病原性Th2細胞維持機構.アレルギー.2017;66(2):86-90.

学会報告

  1. 横田朋学,岡澤成祐,田中宏明,徳井宏太郎,神原健太,猪又峰彦,今西信悟,三輪敏郎,林 龍二,戸邉一之.当科におけるEGFR遺伝子変異陽性肺癌患者の再生検施行率の検討.第231回日本内科学会北陸地方会;2017 Mar 12;金沢.
  2. 猪又峰彦,田中宏明,徳井宏太郎,岡澤成祐,神原健太,今西信悟,三輪敏郎,林 龍二,菓子井達彦,戸邉一之.進行非小細胞肺癌PS不良例におけるニボルマブの効果と安全性に関する検討.第114回日本内科学会講演会;2017 Apr 14-16;東京.
  3. 猪又峰彦,田中宏明,下川一生,徳井宏太郎,高 千紘,岡澤成祐,神原健太,今西信悟,山田 徹,三輪敏郎,林 龍二,菓子井達彦,松井祥子,戸邉一之.高齢者EGFR遺伝子変異陽性肺癌症例におけるEGFR-TKI投与に伴う食欲不振の発現頻度に関する解析.第57回日本呼吸器学会学術講演会;2017 Apr 21-23;東京.
  4. 岡澤成祐,田中宏明,下川一生,徳井宏太郎,高 千紘,神原健太,猪又峰彦,今西信悟,山田 徹,三輪敏郎,林 龍二,松井祥子,戸邉一之.膿胸を契機に診断された著明な低補体血症を有するIgG4関連胸膜炎の1例.第57回日本呼吸器学会学術講演会;2017 Apr 21-23;東京.
  5. 今西信悟,田中宏明,下川一生,徳井宏太郎,高 千紘,岡澤成祐,神原健太,猪又峰彦,山田 徹,三輪敏郎,戸邉一之,林 龍二,松井祥子.クローン病治療中に発症した夏型過敏性肺臓炎の一例.第78回呼吸器合同北陸地方会;2017 May 27-28;新潟.
  6. 平井孝弘,神原健太,㔟藤善太,田中宏明,下川一生,徳井宏太郎,高 千紘,岡澤成祐,猪又峰彦,三輪敏郎,戸邉一之,林 龍二.肺腺癌の化学療法中再生検にて小細胞癌を認めた一例.第78回呼吸器合同北陸地方会;2017 May 27-28;新潟.
  7. 猪又峰彦,㔟藤善太,平井孝弘,田中宏明,下川一生,高 千紘,徳井宏太郎,岡澤成祐,神原健太,今西信悟,山田 徹,三輪敏郎,松井祥子,戸邉一之,林 龍二.EGFR遺伝子変異陽性肺癌におけるPD-L1発現のニボルマブ治療効果への影響に関する検討:5例報告.第72回日本肺癌学会北陸支部学術集会;2017 Jul 8;福井.
  8. 神原健太,㔟藤善太,平井孝弘,田中宏明,下川一生,高 千紘,徳井宏太郎,岡澤成祐,今西信悟,山田 徹,三輪敏郎,松井祥子,猪又峰彦,戸邉一之,永井正一,林 龍二,井村譲二.肺小細胞癌の治療中、放射線脳壊死を認めた1例.第72回日本肺癌学会北陸支部学術集会;2017 Jul 8;福井.
  9. 徳井宏太郎,㔟藤善太,平井孝弘,田中宏明,下川一生,高 千紘,岡澤成祐,神原健太,今西信悟,山田 徹,三輪敏郎,松井祥子,猪又峰彦,戸邉一之,林 龍二,明元佑司,北村直也,本間崇浩,三輪重治,井村譲二.無症状で発見され完全切除を得た巨大な後縦隔原発脂肪肉腫の1例.第72回日本肺癌学会北陸支部学術集会;2017 Jul 8;福井.
  10. 岡澤成祐,勢藤善大,平井孝弘,木戸敏喜,田中宏明,下川 一生,徳井宏太郎,高 千紘,神原健太,猪又峰彦,今西信悟,山田 徹,林 龍二,松井祥子,東 祥嗣,山本善裕,戸邉一之.外来ロールプレイにおける疑似電子カルテの教育効果評価に対する検討.第49回日本医学教育学会大会;2017 Aug 18-19;札幌.
  11. 松井祥子,篠田晃一郎,徳井宏太郎,岡澤成祐,神原健太,猪又峰彦,山田 徹,林 龍二,多喜博文,戸邉一之,柚木達也,牧野輝彦,中島隆彦,井村穣二.類似した経過を呈したIgG4関連疾患例.第26回日本シェーグレン症候群学会学術集会;2017 Sep 8-9;東京.
  12. 猪又峰彦,田中宏明,下川一生,徳井宏太郎,高 千紘,岡澤成祐,神原健太,今西信悟,林 龍二.EGFR-TK1治療症例における腫瘍VEGF発見レベルと生存期間との関係に関する解析.第58回日本肺癌学会学術集会;2017 Oct 14-15;横浜.
  13. Kambara K, Hayashi R, Setou Z, Hirai T, Tanaka H, Tokui K, Taka C, Okazawa S, Inomata M, Imanishi S, Yamada T, Miwa T, Matsui S, Akemoto Y, Kitamura N, Homma T, Tobe K.CT Findings Reduce the Risk of EBUS-TBNA. WCLC 2017; 2017 Oct 17; 横浜.
  14. 岡澤成祐,㔟藤善太,平井孝弘,田中宏明,下川一生,徳井宏太郎,高 千紘,神原健太,猪又峰彦,今西信悟,山田 徹,三輪敏郎,戸邉一之,林 龍二,松井祥子.当科における気管支喘息患者に対するメポリズマブの使用経験.第79回呼吸器合同北陸地方会;2017 Nov 11-12;富山.
  15. 徳井宏太郎,㔟藤善太,平井孝弘,田中宏明,下川一生,高 千紘,岡澤成祐,神原健太,今西信悟,山田 徹,三輪敏郎,松井祥子,猪又峰彦,戸邉一之,林 龍二.経過観察中に浸潤影が急速に出現し増悪した肺MAC症の2例.第79回呼吸器合同北陸地方会;2017 Nov 11-12;富山.
  16. 㔟藤善太,徳井宏太郎,平井孝弘,田中宏明,下川一生,高 千紘,岡澤成祐,神原健太,今西信悟,山田 徹,三輪敏郎,松井祥子,猪又峰彦,戸邉一之,井村譲二,牛島龍一,林 龍二,南坂 尚,中嶋隆彦,三輪重治,石井陽子,笹原正清.気道狭窄、心尖部心室瘤、多発肝腫瘤を伴ったサルコイドーシスの1例.第79回呼吸器合同北陸地方会;2017 Nov 11-12;富山.

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