01:同期のきずな同期同士、お産の取り合い?
頼れるのは、やっぱり同期。

座談会メンバー

  • 島友子

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  • 伊藤実香

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  • 米田徳子

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あっという間の十数年間。色々ありました。

ー入局当初の雰囲気を教えてください

島:もともと同期は10人いたんですけど、みんな結構早いうちに辞めていったよね。

伊藤:家庭の事情とか、結婚してとかで、今はこの3人。

米田:入局したての頃は、症例も取り合いだったね。誰が先に帝王切開するか、執刀できるかって。人数がたくさんいたから。

島:みんなすごくガツガツしていたよね。競争してた感じ。

米田:そう思うと、今の子たちはちょっとのんびりしてるよね。

伊藤 :だって人数が違うもん。私たちの時は、ぼーっとしてたらなんの仕事もできなかった。やりたい気持ちが強かったよね。同期がやってるのを後ろからじーっと見てね。

米田:「私もやりた?い!」って。上の先生たちは誰がどれだけやったとかはカウントしないし、10人もいたら誰に何教えたかわかんなくなっちゃうでしょ。だから自分から行かないとって気持ちはありましたね。

ーいまだから明かせる話、ありますか?

伊藤:それからは、1個下に2人入って1人辞めて、2個下に4人入って、そこからは6年間ずっと0人。誰も入ってこなかったんです。

米田:暗黒時代・・・。

島:思い出したくないくらい辛かった・・。

米田:雰囲気悪かったよね。みんな疲れてたし。

伊藤:でも、辛いところ見せたら新しい人が入って来ないからって、その時に当直体制を変えたんだよね。それまでは主治医制で、入院患者さんになにか起こったら主治医が駆けつけるシステムだったんです。でもそれだと四六時中拘束されるから、みんな一様に疲れちゃう。

島:患者さんにしてみれば主治医制が一番なんだと思うけど。いつもみてくれてる先生が夜中でも飛んできてくれる訳だからね。

米田:それをやめて、夜起こることは当直医がなんとか対応するって風になったんだよね。

島:本当それまでは嫌な雰囲気だった。ギスギスしてて。

米田:私たちが研修医だった時なんかは、婦人科の先生が当直しているのに関わらず、産科の先生が家から呼ばれてお産をとってたんです。それで、婦人科の先生は当直なのに寝ちゃう。主治医じゃないから。なんか変だなって思っていました。でも病院できて20年くらいそれでやってきたって言ってるしなあ・・・というような。

島:婦人科の人もお産をとれるんだけど、「産科じゃないし」って感じでね。

伊藤:婦人科の先生は昼間、8時くらいかずっと手術やってるからお互い様なんですけれど。

島:とにかくずっとメリハリのない生活なんですよ。

伊藤:朝来たら先輩がここにパイプ椅子3つ並べて寝てたりとか。

米田:10年後こうなるのかと思うと怖かったよね。

伊藤:だから入ってこなかったんだろうね。先生たち疲れてるし、なんかギスギスしてるし。学生や研修医は、それを見ちゃってるわけだもん。

島:負のスパイラル・・。

米田:教授も「流石にこの医局潰れるかな、このまま無くなってもしょうがない」とか呟いてたことがあって、「えー!そこまで来たか!」って思ったよ(笑)。

島:サメちゃんとかが入るって言ったときも全然信じてなかったね、どうせ入らないって(笑)。

米田:みんないじけてた(笑)。

伊藤:それからは、明るい感じの雰囲気になるように心がけています。教授の文句を明るい感じでとってもらえるようにするとか(笑)。陰湿にならないようにするとか。

米田:休みを取るように言ってあげてるね。「休みなさいよ?」って。

伊藤:自分が休まないと休みづらいってことがわかったので、「私のことを気にしないで休んで欲しい」とは言うようにしていますね。

米田:そういえば研修医の時は、何もすることがなくても、上の先生が帰らないと帰れなくて無駄に病院にいたなあ・・。

伊藤:病院が好きだと思われてたり(笑)。

米田:帰りづらいだけなんだけどね。上の先生より早く帰るのが良くないと思ってたから。

同期3人、初めての“共同作業”。

ー3人の関係はどうですか?

伊藤:多分、その暗黒時代を乗り切れたのは同期がいたからかも知れないですね。誰もいなくて1人だったら本当に辛かっただろうな。

米田:辞めてたかもね。

島:私がちょっと気分が落ち込んで、辞めたいってくらいしんどくなった時があったんです。割と最近。その時は同期3人でご飯たべましたね。

米田:私が無理やり連れてった感じだったけど(笑)。「いこう、同期で美味しいもの食べよう!」ってね。でも、あれから良い波が来たんだよ。ちょっと変わってったよね。

島:みんなわざわざ子供預けて、きてくれて。

米田:遅い時間に合わせてね。

伊藤:今度は泊まりで行きたいね?。

島:うちの子がもうちょっと大きくなってからかな。人に預けられるくらいになってから。

伊藤:ケンちゃんは連れていけるでしょ。まだ小さいから、寝かせておけばいい。あ、私が帝王切開したんだ、ケンちゃん。

島:あ、そうだ。私の帝王切開。

米田:2人で島ちゃんの帝王切開したね。麻酔科も同期だった。

伊藤:予定よりちょっと早かったんだよね。

島:そう。それで「もう誰でもいいからやって!」って風になったんだけど、みんな遠慮しちゃうでしょ。結局その時も、頼りは同期しかいないという(笑)。

伊藤:上の先生も、下の先生も遠慮しちゃって。

米田:もう「私がやるしかない!むしろやらせてください!」って感じ。

伊藤:緊張しましたよ。

島:喋りながらやってたよね。「お願いしまーす!」って(笑)。

伊藤:同期3人の共同作業だね(笑)。

伊藤:お腹の傷を小さくしてあげたい気持ちが強すぎて、ケンちゃん引っかかって出てこれなくなっちゃった(笑)。今思い出してもおもしろい。

島:ケンちゃん頭に跡ついてたもんな。

伊藤:裏目にでちゃったね。オギャーって言ってるのになんでこっから出てこないんだ?って(笑)。絶対眉毛の骨が引っかかってた。

米田:しかも本人がカメラでみてるんですよ。後輩の布村さんも入ってたね。手の位置から指導されてて・・(笑)。「ここはどうやって締めますか?何縫い?」とか言って、監視されてる感じ(笑)。

島:モニターみながらチェックしてた。

伊藤:自分の体をつかって、指導者として(笑)。

米田:そういえば、ケンちゃん、当時はまだ名前決まってないから、勝手に「しまじろう」って名前つけてた(笑)旧姓がしまだから。「しまじろう頑張れ?」って。

伊藤:ケンちゃんには一生言うよね。

米田:出してあげたんだよ?って。

島:一生頭が上がらないだろうね(笑)。

同期がいたから、頑張れた。

ー職場での人間関係はどうですか?

伊藤:けっこうみんな助け合ってるよね。帝王切開とかは1人じゃできないし。

米田:緊急事態の時は自然に人が集まって助け合いますよね。そうしないと自分がピンチになった時困っちゃう(笑)。

島:緊急の頻度が、他とはぜんぜん違うからね。

伊藤:同期だけに関わらず、上下の団結も強いなっていうのは昔から思っていました。やっぱり後輩から電話があったら、家にいても「急いでいこう!」って思いますもん。普段の関係が悪かったらそうはできないかもしれない。

米田:島ちゃんが他の病院から妊婦さんを連れてきた時とかすごかったよね。

島:あれは本当にね。妊婦さん、すっごい出血しちゃって。私の医者生命に関わるかもって思うくらいの大変な症例だったんですよ。みんな集まってきて、みんなすごい必死になって。団結して。

米田:本当、医者生命に影響することがあったら大変!って感じでした。もうなんとかしなきゃって。もちろん知らない先生からの紹介できた人にも一生懸命やるんですけど、島ちゃんだからなおさら気持ちが入りました。本当に助かってよかったよ。

島:麻酔科の人が血を調べてね。

米田:そうそう。そしたら血が止まって。未だに語り継がれている。

ーこれからについて考えていることはありますか?

米田:いろいろ辛いこともありましたけれど、続けててよかった、やっててよかったなって思います。だって自信がなかったらできないじゃないですか。同級生の帝王切開なんて。自分が2年目とか3年目とかなら緊張しすぎてできないだろうし。今は余裕はないけれど、自信はそれなりにあるから。

伊藤:結局私の子供も泉(米田の旧姓)ちゃんが取り上げてくれたんだもん。

島:同期同士でね。お互いにお産の取り合い(笑)。信頼してないとなかなかできないよね。

伊藤:いろいろ蘇ってくるなあ・・。

米田:感動的だったね。

島:あとは、毎年5人ずつくらいコンスタントに入ってきてくれると助かるかな。

米田:あんまり一気にたくさん入ってくると十分指導できないかもしれないから。

伊藤:自分達がそうだったし。でも産婦人科を希望して入ってくる子にやる気ない人がいないのが良いと思う。

米田:志がある人が多いんだよね。

伊藤:きついってわかってて、入ってくるわけだからね。腹くくって来てる。

米田:人が増えれば増えるだけ当直の数が減るし、自由な時間が増えるもんね。それだけ楽になるし、雰囲気もよくなっていくからね。

島:やっぱり最後は同期だよ。これからも助け合っていきましょう。