県内で初めて、重症の心不全に対する補助人工心臓による治療に成功

県内で初めて、重症の心不全に対する補助人工心臓による治療に成功





 このたび、富山大学附属病院第二内科の絹川弘一郎教授、同第一外科の深原一晃准教授らは、2017年4月、富山大学附属病院において心臓の難病『完全大血管転位症』の患者に対し、体外設置型の補助人工心臓(VAD)を用いた治療に成功しました。なお、同症に対するVAD手術は国内2例目であり、富山県内でのVAD手術は県内初です。

 これまで心臓のポンプ機能が高度に低下した重症の心不全患者は県外の施設でVAD手術を受けるしかありませんでしたが、重篤な場合には施設までの移動が困難で治療をあきらめるケースも多くありました。今回の成功は重篤な心不全のために苦しまれている富山県内はもとより隣県に在住される患者を救命する大変重要な治療になると考えられます。





 今回、富山市在住の30代の女性で、先天的な心臓疾患である「完全大血管転位症」を患う患者さんに対し、当院において体外設置型の補助人工心臓の装着手術を行いました。

 「完全大血管転位症」は、心臓から全身に血液を送り出す血管と、肺に血液を送り出す血管がそれぞれ通常とは入れ替わっている病気で、全身へ効率よく酸素を運ぶことが困難になるため、心臓に大きな負担がかかります。患者さんは今年4月にインフルエンザにかかり、心臓の機能が急激に低下してショック状態に陥りました。このため緊急手術により補助人工心臓を装着しました。

 補助人工心臓は心臓の広い範囲の炎症や大きな心筋梗塞のために心臓のポンプ機能が失われた重症の心不全の患者さんのために使用される、血液の循環を補助する機械です。補助人工心臓にはポンプが体の外にある体外設置型(主に数ヶ月の使用)とポンプが体内にある植込型(数年にわたり使用可能)の2種類があります(詳細はこちらのページをご覧ください)。

 今回の治療は、心臓のポンプ機能の低下した患者に対して緊急で行う手術であり、さらに完全大血管転位症のような複雑な血管の走行を持つ状態で行われた難易度の高いものでした。しかし術後は徐々に回復し、現在では植込型補助人工心臓への切り替えを目指しリハビリを続けています。

 当院では今年1月に「循環器センター」を立ち上げ、循環器疾患に対し、診療科の枠にとらわれずスタッフが連携して治療を提供できる体制を整えたところですが、今後も主に重症の循環器疾患を抱えた患者さんに対して最善の治療を提供できるよう努力して参ります。





補助人工心臓による治療について記者会見を行う深原准教授、絹川教授、齋藤病院長(左から)





補助人工心臓について説明する深原准教授(左)と絹川教授



Copyright © Second Department of Internal Medicine,University of Toyama All rights reserved. 富山大学大学院医学薬学研究部内科学第二(第二内科)