富山大学 学術研究部医学系 神経精神医学講座

研究のご紹介Research

基礎実験・動物実験

 当講座の研究室には4つの実験室があります。臨床検体の分析だけでなく、さまざまな基礎実験・動物実験が可能な設備がそろっており、組織凍結切片やパラフィン切片の作成や各種の染色、ガスクロマトグラフィーやマイクロプレートリーダーを用いた物質定量、遺伝子DNAの抽出、実験動物(ラット)の飼育と各種の行動実験などを行っています。基礎神経科学のめざましい発展と高度化に伴い、以前のように、動物実験を含む基礎実験を行う精神科の臨床講座は少なくなり、それらを志す臨床医もごく稀となりました。しかし、臨床における疑問を基礎実験や動物実験で検証し、その結果をまた臨床に活かすという循環は、医学の発展の基盤となるものです。近年では基礎医学者の精神医学領域における研究への参画が活発になっていますが、臨床講座でしかできないような実験もあり、そのような臨床と基礎の橋渡しに役立つポテンシャルを持った実験室と言えます。

不飽和脂肪酸の測定

 精神機能や精神疾患の病態との関連が報告されている赤血球膜の必須多価不飽和脂肪酸などの各種脂肪酸を測定しています。これまで、統合失調症やat-risk mental state(ARMS)における不飽和脂肪酸と認知機能や事象関連電位との関連など、貴重な研究成果を生み出しています。臨床講座で脂肪酸の定量が可能なところは全国でもごく限られているので、学内の他講座から検体を預かって計測することもあります。近年では、韓国との国際共同研究により、多施設共同による初回エピソード精神病の大規模検体の測定も行っています。

図1.ガスクロマトグラフィー(左)と赤血球膜脂肪酸の定量(右)

統合失調症モデル動物を用いた実験

 当講座では、古くは内嗅皮質傷害ラット、その後は新生仔期にNMDA受容体拮抗薬を投与した神経発達障害モデルラットなどの統合失調症モデル動物を用いたさまざまな検討を行ってきました。近年は、当講座の元教授であった故・倉知正佳先生の発案により、本学理学部有機合成化学、医学部放射線診断・治療学、金沢医科大学精神神経科学との共同で、新たな統合失調症治療薬の開発研究を進めており、新規化合物の統合失調症モデル動物による検証も行っています。

図2.免疫染色によるラット前頭前野のパルブアルブミン陽性ニューロン