11:産婦人科の魅力人間そのもの、人生そのもの、
まるごとぜんぶ。
座談会メンバー
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太知さやか
PROFILEPROFILE太知さやか
- 役職
- 医員
- 出身大学
- 富山大学
- 入局年
- 2016年
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森田恵子
PROFILEPROFILE森田恵子
- 役職
- 医員
- 出身大学
- 富山大学
- 入局年
- 2017年
- 専門医 等
- 日本産科婦人科学会専門医
命をつなぎ、家族をむすぶ。
ーなぜ産婦人科医になろうと思ったんですか?
太知:私は入学当初から産婦人科に興味がありました。神秘的でいいなあと思っていて。ある時たまたま見た新聞記事におじいちゃん医師のインタビューがあって、そこに「産婦人科医は2人の命を同時に救う」って書いてあったんですよ。確かにそうだなあとすごく納得させられて、それから憧れるようになりましたね。学部で他のこともいろいろ経験して迷った時期もありましたが、原点に立ち返り、やっぱり産婦人科医になろうと決めました。「おめでとう」と言えること、患者さんと密に関われること、生活や人生そのものに深く関わる診療科ですよね。
森田:私は逆にもともとあんまり興味がないほうでした。最初に興味を持ったのは発生学という授業で、精子と卵子が出会う物語に感動した時だったと思います。あれだけ無数の精子君たちが泳いでいても出会えるのは1つだけっていうかわいそうな感じが妙に好きになっちゃって・・(笑)。もう一つ、これは私のバックグラウンドなんですが、私の兄は生まれて1ヶ月で亡くなっているんです。それは周産期、つまりお産の時に何かがあったらしいとのことですが、その話がずっと心のどこかに引っ掛かっていたんだと思います。実をいうと、学生時代に産婦人科を見て回った時は全然面白いと思えなかったんですよ。まあ学生のときってそんなにタイミングよく、お産の現場に立ち会えるものでもないですよね。
太知:たしかに。タイミングってありますよね。
森田:ターニングポイントになったのが、1ヶ月間ドイツの産婦人科の見学に行った時ですね。お産の現場を見るのはそこが初めてだったんですけど、赤ちゃんが生まれた瞬間、そのカップルの関係性が変わったように見えたんです。一瞬で家族になった。その様子に感動して、産婦人科への気持ちがガラっと変わりました。産婦人科は面白い。産婦人科医になりたいと思うようになりました。
生まれた命にも、責任を持つ。
ー入局してみて、気づいたことはありますか?
太知:やっぱり生活や人生そのものに強く関わる診療科ですよね。というか関わらざるをえない。
森田:お節介なくらいね(笑)。本当に密に。例えば、生まれた後の赤ちゃんがすくすくと育つためのことを考えると、ただ純粋に「元気なら良し」という訳にもいかないんです。旦那さんとの関係はどうなんだろう、2人の収入は大丈夫なのか、精神状態はどうか、おじいちゃんおばあちゃんが変に関わりすぎていないか・・生まれる前から気にかけた方がいい。そこで問題がありそうだったら、予め地域の保健師さんや役所の人が頻繁に面会にこれるようにしたり、デイケアサービスを利用して24時間1人にならないようにしたり、出産後一時的に赤ちゃんを預かったり、いろいろ対処できるんです。医学的には、ただ元気に産ませれば良いのかもしれませんが、生まれた後のお母さんと赤ちゃんの関係を考えると、そうも言ってられないので。とにかく密に!
太知:そこはやってみなきゃわからないところでしたね。入る前は結構ステキな面ばかり見ていたと言うか。「おめでとう」と言える唯一の診療科だし、今もそれが言えるのがすごく嬉しいっていうのは確かです。だけど出産ってそれだけではない。今はNICUで研修させてもらっているんですが「生まれた赤ちゃんがその後どうなっていくか」を気にかけてあげるのも大切な仕事だと知りましたね。
森田:私たちが関われるのは出産までですが、実際は「生まれたら終わり」ではないので、無事に元気な赤ちゃんを生んで、その子がちゃんと育っていけるように、生まれる命にも責任を持つように関わっていけたらなと思います。


そのひとの人生に、深く関わる仕事。
ーその他に、産婦人科医として、心がけていることはありますか?
森田:赤ちゃんの病気についても、私たちの役割は大きいと思います。妊娠中にわかることもあれば、生まれてきて初めて診断がつくこともありますが、その事実をお母さんや家族がどう受け入れていくか、私たちの関わり方で変わってくるように思います。
太知:NICUにいるとわかるんですが、生まれる前からちゃんと説明を受けて、じっくり考える時間があったお母さんは受け入れもスムーズなんですよね。事実は事実として、どのように伝えるか。私たちの関わり方が親子の関係を変えてしまうかもしれない。そういう意味では産婦人科の役割ってすごく大きいと思います。
森田:生まれてくる赤ちゃんと、その命をお腹の中で育てて生むお母さんと、妊娠・出産・子育てを終え更年期で悩んでいたり、癌と闘病し亡くなっていく人たち、女性のいろんなライフステージに関わることができるのが、産婦人科の面白さだと思うんですよね。お産だけじゃなくて、ホルモンを調整してみたり、手術もできますし。
太知:産婦人科の「特殊さ」だったり「責任」だったり「おめでとう」と言えることだったり、全部が魅力であって、やりがいです。
ー最後に入局を考えている後輩たちへメッセージをお願いします。
森田:とりあえず興味があるならやってみたらいいと思いますよ。
太知:そうですよね。QOLがどうこうとか、周りの意見とか、いろいろ悩みますけど、結局自分が一番興味を持てることじゃないと続けられないと思うから、迷ったら自分の直感の赴くままに飛び込んでみればいいと思いますよ。違うと思ったらやめればいいんだしね。