2024.05.17
妊娠高血圧症候群におけるCD4+ T細胞や制御性T細胞がもたらす免疫バランスの鍵を解明
~妊娠高血圧症候群の新たな治療ターゲットとして期待~
■ポイント
・妊娠高血圧症候群の子宮では、炎症を引き起こすCD4+ T細胞が活性化し、炎症を抑える制御性T細胞が疲弊し、T細胞免疫のアンバランスが生じていることを明らかにしました。
・妊娠高血圧症候群は、いったん発症すると分娩以外に有効な治療がありませんが、本研究成果は、新たな免疫学的治療のターゲットとなることが期待されます。
富山大学学術研究部医学系 産科婦人科学教室 津田さやか 助教、中島彰俊 教授、富山大学 齋藤滋 学長、東京理科大学研究推進機構 生命医科学研究所 炎症・免疫難病制御部門 七野成之 講師、大阪大谷大学薬学部免疫学講座 戸村道夫 教授、女性クリニックWe!TOYAMA 鮫島梓 医師、Cincinnati Children’s Hospital Tamara Tilburgs 博士らのグループは、ヒトの妊娠高血圧症候群の子宮では、炎症を起こすタイプのCD4+ T細胞の一部で活性化を示す遺伝子の発現が上昇、免疫反応を抑え制御性T細胞 (Treg)では疲弊して働きが低下することを示す遺伝子発現が認められることを発見しました。
制御性 T 細胞は免疫応答を抑制する働きを持ち、母体にとって半分他人である赤ちゃんが拒絶されずに妊娠が維持されるために重要です。一方、母児を病原体から守るため、炎症を引き起こすタイプのT細胞の働きも必要です。正常では、制御性T細胞と炎症を引き起こすタイプのT細胞がうまくバランスをとることで、妊娠が維持されます。ところが、妊娠高血圧症候群では、両者のバランスが崩れ、胎盤への拒絶反応が起こることが一因である可能性が指摘されていましたが、どのタイプの T 細胞にどのような遺伝子発現の変化が生じているかはわかっていませんでした。
本研究成果により、妊娠高血圧症候群の治療標的となりうる T 細胞分画と分子の候補が明らかとなり、新たな治療・予防方法の開発への貢献が期待されます。
この研究成果は、令和6年5月7日にスイス科学誌「Frontiers in Immunology」に掲載されました。
【本発表資料のお問い合わせ先】
富山大学学術研究部医学系 産科婦人科学教室
助教 津田 さやか
教授 中島 彰俊
TEL : 076-434-7357
Email : nsf7357@med.u-toyama.ac.jp
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