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2025.03.25

舌がんの免疫サブタイプ分類が治療法選択の指標に-免疫プロファイル解析による個別化医療の可能性-

■ポイント
 舌がんの免疫プロファイルを詳細に解析し、がん微小環境の特徴を明らかに
 舌がんの免疫特性に基づき、患者ごとに五つの免疫サブタイプに分類
 免疫サブタイプごとに適した治療法を検討することで、個別化医療の実現に貢献

■概要
 東京科学大学(Science Tokyo)大学院医歯学総合研究科 顎口腔腫瘍外科学分野および口腔科学センターの蘇郁雅大学院生(博士後期課程)、原田浩之教授、東みゆき名誉教授、臨床腫瘍学分野の加納嘉人講師、頭頸部外科学分野の朝蔭孝宏教授らの研究グループは、富山大学 医学薬学教育部 生命・臨床医学専攻の大内崚大学院生(博士課程)、野口誠名誉教授の研究グループと共同で、舌扁平上皮がんのがん微小環境における包括的免疫プロファイル解析を行い、免疫サブタイプをIからVの五つに分類しました。
 がん微小環境における免疫細胞の集積やその多様性は、がん治療、特に免疫チェックポイント阻害薬による免疫療法の効果に大きく影響します。現在、再発・転移頭頸部がんに対しては、抗 PD-1抗体であるニボルマブやペムブロリズマブの使用が承認されています。しかし、その効果は悪性黒色腫(メラノーマ)や非小細胞性肺がんと比べると十分とは言えません。特に、舌は動く器官であり、日々の生活の中で外界からの刺激を受けやすいため、免疫抑制作用が働きやすいという特性があります。
 本研究では、87例の未治療手術検体を用い、58項目にわたる包括的免疫プロファイル解析を実施しました。さらに、細胞傷害性T細胞(CTL)とがん細胞の空間的解析を行い、免疫サブタイプを五つに分類しました。その結果、免疫プロファイルはTNM分類からは推測できず、患者ごとに異なることが明らかになりました。また、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できる免疫賦活型の割合は16.1%にとどまり、残りのサブタイプでは何らかの免疫抑制が起こっていることが分かりました。この免疫サブタイプ分類は、免疫チェックポイント療法の適応可否を判断する上で有用であり、さらに他の免疫療法や化学療法との併用戦略を検討する際にも役立つと考えられます。
 本研究の成果は、舌がんにおける個別化医療を促進し、より多くの患者に対して最適な治療法の選択を可能にすることで、治療成績の向上に貢献すると期待されます。

 この研究成果は小児医学専門誌「BMC Pediatrics」に2025年3月3日付でオンライン掲載されました。

論文名 : Stratification of the immunotypes of tongue squamous cell carcinoma to improve prognosis and the response to immune checkpoint inhibitors

著 者 : Yuya Su, Ryo Ouchi, Pissacha Daroonpan, Miwako Hamagaki, Tohru Ikeda, Noji Rika, Naoto Nishii, Fumihiko Tsushima, Yoshihito Kano, Takahiro Asakage, Makoto Noguchi, Hiroyuki Harada, Miyuki Azuma

掲載誌 : Cancer Immunology, Immunotherapy

DOI : https://doi.org/10.1007/s00262-025-03982-9

【本発表資料のお問い合わせ先】
 富山大学 医学薬学教育部 生命・臨床医学専攻
 大内  崚
 TEL : 076-434-7383
 FAX : 076-434-5041
 Email : ryomim@med.u-toyama.ac.jp

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【Press Release】
舌がんの免疫サブタイプ分類が治療法選択の指標に-免疫プロファイル解析による個別化医療の可能性-

                

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