2025.07.24
大脳髄膜由来線維芽細胞は脳常在マクロファージと協調して髄鞘形成不全マウス脳皮質における炎症を促進する
■ポイント
● 髄鞘形成不全モデルマウスを用いて、脳皮質における慢性活動性炎症の持続メカニズムを解明した。
● 髄膜(軟膜)由来線維芽細胞と脳常在マクロファージの相互作用が、慢性炎症病変形成において中心的な役割を果たす。
■概要
富山大学学術研究部医学系の奥野のり子助教らの研究グループは、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)α遺伝子の神経系特異的条件付きノックアウト(N-PRα-KO)によりマウスに髄鞘形成不全を誘導し、N-PRα-KOマウスの大脳皮質における炎症の慢性化メカニズムを解析することに成功した。その結果、軟膜由来線維芽細胞と脳常在マクロファージの間に炎症を持続させる細胞間サーキットが形成され、線維化、グリオーシス、血管新生、神経細胞における酸化ストレスを引き起こすことが明らかになった。さらに、軟膜由来線維芽細胞に高発現しているPDGFRαの中和抗体をN-PRα-KOマウスに投与することで、線維芽細胞の脳皮質への侵入および関連する組織学的変化が抑制されることを確認した。これらの研究結果によって、軟膜由来線維芽細胞と脳マクロファージの相互作用が脳の炎症病態、例えば多発性硬化症の増悪などにおいて重要な役割を果たす可能性を指摘した。
本研究成果は、「Acta Neuropathologica Communications」に 2025年7月4日(金)(日本時間)に掲載されました。
論文名 : Brain macrophages and pial fibroblasts promote inflammation in a hypomyelination model
著 者 : Okuno N., Yamamoto S., Hamashima T., 他
DOI : https://doi.org/10.1186/s40478-025-02063-3
【本発表資料のお問い合わせ先】
富山大学学術研究部 医学系
教授 髙田 尚良
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● E-mail : ktakata@med.u-toyama.ac.jp
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【Press Release】
大脳髄膜由来線維芽細胞は脳常在マクロファージと協調して髄鞘形成不全マウス脳皮質における炎症を促進する