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婦人科悪性疾患について
婦人科がんの早期発見にはほんのちょっとした婦人科的症状が大変重要です。
たとえば不正性器出血、帯下(おりもの)増量で子宮頚がんが発見されたり、月経不順で受診して子宮体がんが発見されたりもします。便秘症で下腹部がはっていると思っていたのに、卵巣がんで腹水が溜まっているときもあるのです。
何かおかしいなと思ったら、気軽に婦人科外来を受診してください。
また、他院での診断治療に納得できないときも受診してください。予約や紹介状はいりません。セカンドオピニオンを聞きにくるだけでも結構です。
必要に応じて、婦人科腫瘍専門スタッフ(婦人科腫瘍外来)が対応させていただきます。

当科におけるがん診療の特徴として「がんが疑われたらできる限り早く治療を!」と考えている点です。
がんは緊急性のある疾患だととらえ、「治療のための待ち時間」ができないよう1日でも早く治療が開始できるよう全スタッフで協力しています。
また、ベストの治療ができるように、婦人科医だけではなく放射線治療専門医や消化器外科医、病理医などの協力を得ています。
どんな症状がある場合に、一般外来を受診すればよいでしょうか?
  • 不正性器出血がある
  • 帯下(おりもの)の異常(量・色・におい)
  • 外陰部の違和感・痛み・かゆみ・できもの
  • 月経の異常(不順・月経がこない・量が多い、少ない・血のかたまりがでる・月経痛がひどい)
  • 貧血・だるい・立ちくらみ
  • おなかが張る・下腹部にしこりがある・最近便秘がち
  • 尿が近い・出にくい・もれる
  • ガスがもれる・便がもれる
  • 何か腟の入り口に触れる・子宮の下垂感
  • 性交時に痛みがある
  • 排便時に痛みがある  などなど
通院イメージ
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子宮頚がん治療の特徴
子宮頚がんとは?

子宮がんで子宮の入り口にできるがんです。
性交によって感染するヒトパピローマウイルスの感染や、喫煙が大きな原因です。子宮頚がんは、コンジローマ・クラミジア・ヘルペス・淋菌・梅毒などの性交感染症と同じと考えられるのです。
子宮頸がんの若年化が進み、20~30歳代の女性が過半数を占めるようになりました。がん化にはヒトパピローマウイルス(HPV)感染が深く関与しています。

自覚症状は?

ほとんどありません。
ひどくなると不正性器出血がはじまりますが、不正性器出血のすべてが子宮頚がんではなく、いろいろな原因で起きます。そのため残念ながら、婦人科検診しか早期発見は不可能です。
つまり婦人科がんの定期健診は、セックスの経験のある人は年に少なくとも1回は必要です。
そこで大学病院では、婦人科一般外来にいらっしゃった方に、婦人科がん細胞診の検査を受けて頂くように勧めています。

子宮頚がん細胞診とは?

がんの検査だから診察は通常の婦人科診察より痛い感じがするのですが、心配はいりません。
子宮の入り口の粘膜細胞を綿棒などでこすって採取するだけですので、たいした痛みもなく一瞬で終わります。帯下(おりもの)の検査と同じです。

子宮頚がんの治療の選択とは?
子宮頚がんの治療は、進行期によって違います。
視診・内診・直腸診・腎盂尿管造影検査にて進行期診断します。つまり内診と直腸診が非常に重要です。またCT検査やMRI検査、PET検査を治療法決定の参考にします。
当科では、患者様の一番希望する治療を相談しながら決定します。たとえば挙児希望が強いときは、子宮を温存するために円錐切除術を選択して、厳重に経過観察します。

当科では、0期のがん(上皮内がん)に対して低侵襲かつ確実な円錐切除術のみを行い、子宮を取らずに十分治療できることを立証しています。
またⅠb期からⅡb期までの広汎子宮全摘術は婦人科腫瘍専門医が中心となって行っています。
手術が不可能な方には化学療法併用放射線療法を主として行っています。放射線治療には放射線治療医とチームになって治療にあたります。特殊な照射方法として、コンピュータで腫瘍を3次元で摘出し、腫瘍部だけを放射線照射する定位放射線治療や、腫瘍組織内に照射する組織内照射ならびに子宮膣内照射も行っています。
治療イメージ
子宮頚がんの治療成績は?

一般にがんの治療成績は5年生存率で比較します。つまり富山大のがんの治療成績と全国の治療成績を比較すれば、大学の医療レベルがはっきりすることになります。
進行期分類で5年生存率を比較すると以下の通りです。

進行期別5年生存率の比較 当科の治療成績は全国平均と比べて同等ですが、Ⅲ期の治療成績が良好です。
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子宮体がん治療の特徴
子宮体がんとは?

子宮がんで子宮の奥にできるがんです。
原因は不明ですが、子宮内膜細胞が女性ホルモンの過剰のため異常に増殖し始めると、がんに変化して行くと考えられています。
子宮体がんは未妊婦・肥満・糖尿病・月経不順・無月経の方は特に要注意です。

自覚症状は?
初期はほとんどありません。
ひどくなると不正性器出血がはじまりますが、不正性器出血は子宮体がんだけではなく色々な原因で起きます。そのため、残念ながら経腟超音波検査と内膜細胞診を併用する婦人科検診でしか、早期発見は不可能です。
つまり婦人科がんの定期健診は、セックスの経験や妊娠の経験のない人でも、月経不順・不正出血の症状がある方は年に少なくとも1回は必要です。
閉経後の出血はがんの可能性が高いので、かならず婦人科を受診してください。
子宮体がん細胞診とは?
がんの検査だから診察は通常の婦人科診察より痛い感じがするのですが、心配はいりません。
子宮の奥の粘膜細胞を子宮腔内に挿入できるソフトな器具などでこすって採取しますので、軽い生理痛様の痛みはありますが一瞬の内に終わります。しかし子宮頚がん検査より少し時間もかかります。
未妊婦の患者様で閉経後の人は、歯科で行う麻酔と同じ局所麻酔をして、子宮口を拡張してからしか施行できないことがあります。

細胞診で異常が出た場合は、組織診(子宮内膜生検)を行い診断します。
子宮体がんの治療の選択とは?
子宮体がんの治療は進行期によって違います。
子宮体がんの進行期は手術により決定します。 術中病理診断が非常に重要となります。
またCT検査やMRI検査、PET検査は術前の治療法決定や手術法の準備の参考にします。
当科では、患者様の一番希望する治療を相談しながら決定します。
たとえば挙児希望が強いときは、子宮を温存するためにホルモン治療を選択して、厳重に経過観察する場合もあります。

当科の特色として、下肢リンパ浮腫の原因となる骨盤内リンパ節郭清は再発ハイリスク症例のみに限っています。それでも当科の成績は全国平均と変わりません。つまり副作用が少なく治療成績は良いということになります。
治療の選択イメージ
子宮体がんの治療成績は?
一般にがんの治療成績は5年生存率で比較します。つまり富山大のがんの治療成績と全国の治療成績を比較すれば、大学の医療レベルがはっきりすることになります。
進行期分類で5年生存率を比較すると以下の通りです。
進行期別5年生存率の比較
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卵巣がん治療の特徴
卵巣がんとは?

卵巣は左右2個で子宮の両脇にある卵管の近くにぶら下がってあります。親指の頭ほどの小さな臓器です。
卵巣腫瘍には良性と境界悪性と悪性があります。
良性卵巣腫瘍には卵巣嚢腫や線維腺腫などがありますが、摘出して顕微鏡で調べないと、良性と境界悪性と悪性の鑑別はできません。

自覚症状は?

卵巣は骨盤内の奥深くにあるので、腫瘍になっても初期ではまったく症状がありません。
そのため自覚症状がでにくいため、知らないうちに病期が進行してしまうのです。
腫瘍がこぶし大以上になってはじめて症状が出てくることが多いです。下腹部をさわると、しこりを感じたり、周囲臓器が圧迫されるため腹部の圧迫感、下腹部の膨満感や痛み、便秘、月経以外の腰痛や腹痛などの症状がでてきます。
しかし症状のない場合は、最近下腹部が太って出てきたと考えてしまう女性も多いようです。
時には、卵巣腫瘍が鶏卵大より大きくなってしまい、お腹の中で卵巣をぶらさげている靭帯や卵巣動静脈のところでねじれる茎捻転を起こしやすくなります。
茎捻転がおきると悪寒や嘔吐を伴う激しい下腹部痛が起き、あまりの痛みに気を失う人もいます。
さらに卵巣嚢腫が破裂して腹腔内で出血を起こすと、出血性ショックを起こし、生命に危険を及ぼすような急性腹症もあります。

卵巣がん検診とは?

子宮頚がんや体がんのように、細胞診検査はできません。卵巣がんの早期発見のためには、婦人科で内診および超音波検査を受けることが必要です。
腟から行う超音波検査では約3~4cm大の正常の卵巣も確認できるので、1~2cm大の卵巣嚢腫でも発見できます。
検診の結果は、卵巣嚢腫があるのかまたは充実性腫瘍があるか、嚢腫であれば単胞性か多胞性か、内腔に増殖部分があるかどうかが重要です。特に乳頭状に増殖部分が見つかれば悪性の可能性があります。
超音波検査の結果により、必要に応じてMRI検査などを行います。

卵巣がんの治療について

卵巣がんの治療成績は、化学療法の感受性ならびに手術療法の手技により異なります。
当科では外科医の協力を得て出来る限り腫瘍を摘出する積極的治療を基本とし、抗がん剤による補助治療も常に最新の治療方針を導入しています。

当科においては、がんは救急疾患として捉え、1日でも早く手術を行えるよう、全スタッフが懸命に手術室と交渉したり、CTやMRIなどの検査がスムーズにできるように努力しています。

治療についてイメージ
卵巣がんの治療成績は?

卵巣がんは進行すると再発率も高くなります。

しかしながら、再発後でも症例に応じて再発腫瘍の摘出や抗がん剤による化学療法を継続することにより、生存率をのばすことが可能です。

当科では、初発時だけでなく、再発後も個々の症例に応じてオーダーメイドの治療をすることで、進行期症例の予後改善に努めています。

進行期別5年生存率の比較 Ⅲ期での卵巣癌治療成績は極めて良好です。これは個々の症例ごとに集学的な治療(手術療法、化学療法)を行っている結果と言えます。