早産の予防と治療について
日本の周産期死亡率は世界最低ですが、その死亡の70%以上が早産児で占められています。
特に自然早産が多く、ときとして児の未熟性がその後の発達に問題を残すこともあるため(特に20週台での早産児)、自然早産を予防すること、あるいは切迫早産等の診断が下された場合には最適の治療(娩出時期など)を受けることが重要です。
早産はなぜ起きる?
当教室では早産の過半数が感染によることを見出しています。
膣炎から子宮頚管炎(子宮の出口に細菌が感染)、絨毛膜羊膜炎(赤ちゃんを包む膜の周囲へ炎症が及ぶ)というように細菌は下から上へと上行し、そしてこれが原因でおこる前期破水や子宮内感染によって子宮の収縮(陣痛)が起こります。
こうなると早産は止めることができず、未熟児で生まれてしまうばかりでなく、赤ちゃんの脳発達にも障害を与える可能性が出てきます。
治療の特徴
早産の予知・予防―最新の妊娠管理
当科では、より早い段階でこのような感染や炎症を察知し、早期から治療を行うことで早産を減少させることに成功しています。
子宮頚管炎の有無を見分ける新しい検査を独自に開発し、炎症を発見した場合には、炎症を抑え、さらなる感染を予防するための治療を行っています。
周産期部門治療イメージ
早産を防ぐ治療

膣炎や子宮頚管炎の段階で感染を治療すれば、早産の防止につながります。また、この段階で治療を行えば、切迫早産として長期間点滴治療を行ったりする必要性が減ります。
また、自然早産の根本的な原因である絨毛膜羊膜炎(卵膜炎)に至った場合には、放置すれば陣痛が起こってしまいます。点滴で陣痛を止め、子宮の出口が開くことを止める治療が有効なケースが多いですが、場合によっては、赤ちゃんに炎症や感染が及んで脳障害・呼吸器障害(胎児炎症反応症候群、敗血症)を起こす前に、適切なタイミングで赤ちゃんを出してあげる方が良いケースもあります。
残念ながら前期破水や子宮内感染を起こした場合には、長期の妊娠期間の延長は困難であり、赤ちゃんを感染やその他の合併症から守り、最良の状態で出生できるような特殊治療が必要になります。

当科では、このような治療を最新の知見に基づいて行い、早産や、感染による児の障害を減らすことに成功しています。
また、マウスを用いた早産マウスモデルを作製し、早産防止のための安全で新しい治療薬を検討する努力もしています。

早産で生まれた赤ちゃんを最良の状態で
早産児はもちろん、合併症を持つ赤ちゃんのための新生児集中治療室(NICU)を備え、産科、小児科、小児外科、小児心臓外科の専門スタッフが連携を取り、一人一人の赤ちゃんにとって最善の管理を行う体制を常に完備しています。
また、未熟な赤ちゃんは抵抗力が弱く、種々の感染症が生命にかかわる大きな問題になります。
現時点では感染から赤ちゃんを守る手段には限界があるため、新しい治療法を探って様々な角度から日夜研究を続けています。