
当科では、内視鏡を用いた子宮筋腫、良性卵巣腫瘍、子宮内膜症の手術を行っています。
良性腫瘍では80%以上の手術が内視鏡下で行われています。
腹腔鏡下手術とは、開腹せずに腹腔鏡で腹腔内の様子をビデオスクリーンに写しだし、この画面を見ながら特殊な器具を使って手術を行う方法です。
腹腔鏡下手術では、お腹に5~10mm程度の小さな穴を4ヶ所ほど開けるだけで手術ができます。傷が小さいため、術後の痛みが少ない上、傷はほとんど見えなくなるので美容上の利点もあります。術後3~4日という短期間の入院ですみ、社会復帰も早くなります。
開腹手術に比べて腹腔内の癒着が起こりにくいともいわれ、不妊症患者の手術にも適していると考えられています。このような観点からも腹腔鏡下手術は今後ますます盛んになる手術法と考えられます。
当科では、子宮内膜症、卵巣嚢腫、子宮筋腫、異所性妊娠、不妊症(卵管卵巣周囲癒着症や多嚢胞性卵巣)などを対象に腹腔鏡下手術を行っています。当科での腹腔鏡下手術の実施件数と実施率は、どんどん増えています。
子宮内膜症とは、月経の時に子宮の内側からはがれ落ちる子宮内膜と似た組織が子宮以外の腹腔内のあちこちにできてしまう病気で、初経から閉経までの生殖年齢の女性に起こります。
その発生頻度は生殖年齢女性の約10%といわれ、全国で12から13万人の女性が子宮内膜症に対する何らかの治療を受けているともいわれています。
子宮内膜症に罹ると痙攣状の激しい痛み(骨盤痛・排便痛・性交痛)に悩まされ、日常生活にも影響するばかりか、不妊症の原因にもなることがあります。
良性卵巣腫瘍のほとんどにおいて腹腔鏡下手術が可能です。
最近では、婦人科良性手術の70%以上が腹腔鏡下手術になりました。
腹腔鏡下手術の場合、術後2から5日で退院が可能です。
子宮筋腫とは子宮に硬いコブができる良性腫瘍で、40台の女性の約3人に1人が大なり小なりの子宮筋腫を持っているといわれています。
症状がなければ特に治療する必要はありませんが、巨大な子宮筋腫や月経量が増えるために貧血になってしまったり、便通が悪くなったり、尿が出にくくなってしまったりする場合や、不妊の原因と考えられるような場合には、手術を検討しなければなりません。
子宮筋腫の治療には大きく分けて、子宮筋腫を小さくする薬物療法と、子宮筋腫を取り除く手術療法があります。
薬物療法で使われる月経を止めてしまう薬は副作用があるため、使用できる人は限られています。
当科では患者さんと話し合った上で、腹腔鏡下手術も積極的に行っています。
手術方法として、子宮筋腫核出術(子宮筋腫だけを取り除き、子宮そのものは残しておく)と子宮全摘術があり、患者様の状況によって選択しています。
子宮筋腫核出術は未婚女性や妊娠・分娩を希望している女性に対して行われます。子宮は残りますが、再発の可能性も残ります。
子宮全摘術には、腹式手術、腟式手術、腹腔鏡下手術とがあります。
腹腔鏡下手術とは、開腹せずに腹腔鏡下に処理した後、子宮そのものは腟から取り出す手術です。
腹部に出来る傷は3ヶ所の小さなもので、術後の痛みも軽くなります。退院も開腹手術に比べてかなり早く術後3から5日程で可能です。
以前はほとんどが開腹手術が行われてきましたが、最近では当科でも腹腔鏡下手術が多くなってきています。
異所性妊娠(子宮外妊娠)とは受精卵が子宮内膜でない場所に着床した状態です。
多くは卵管に起こりますが、卵管が破裂し、腹腔内で大出血が起こるとショック状態になることもあります。そのため破裂する前に手術を行います。もちろん破裂すれば直ちに手術を行います。
従来、開腹による卵管摘出術が多く行われてきました。
しかし現在はほとんどを腹腔鏡下手術で行っています。患者様の状態に応じて、卵管切除術もしくは卵管線状切開内容除去術を行っています。
その他、不妊症の原因ともなりうる卵管卵巣周囲癒着症や多嚢胞性卵巣などに対しても、腹腔鏡下に手術を行っています。